2023年2月16日木曜日

悉皆屋康吉

 たまたま舟橋聖一の「悉皆屋康吉」と云う小説を読んだらなかなか面白いものでした。

 悉皆屋(しっかいや)とは、元々大坂で染め物・洗い張りなどの注文を取り、京都の専門店に取り次ぐことを業とした者のことで、転じて染め物や洗い張りを職業とする人のことを云うようです。

 小さな悉皆屋の手代康吉(こうきち)は大店の番頭伊助に性根を見込まれて勤めるようになる。そこで新しい染め物を考案するなど実績を上げた康吉は番頭になるが、関東大震災でその店も潰れてしまう。

 零落した主人にどこまでも仕えていた康吉だが主人が商人の掟さえ破るようになって、とうとう主人を見放す。

 小さいながら自分の店を持つようになった康吉の前に主人が現れ娘を康吉に託して京都へ落ち延びる。我がまま娘を妻とした康吉は、もともと憧れていた娘だけに押さえられず憤懣を抱きながらも商売に精を出し次第に認められていく。

 もともと、染色に才を持つ康吉は商売一手には疑問を持ち、誰もが奢侈に浮かれる中、不穏な時勢も敏感に感じている。

 あることから恩人とも云うべき昔の番頭伊助が精神病院に入院しているのを知るが伊助は廃人同様になっていた。

 その後、商売上も転機を迎えた康吉は、死んだ伊助が残したメモを読みながら新しい方向への意欲を燃やす。妻のお喜多ともいつのまにかしっくり相和すようになっていた。

 と云うのがあらすじですが、読みだしたら止まらず一気に読んでしまいました。

  

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