2022年2月5日土曜日

立春

  昨日は立春。

 雪もこの日だけは降るのを遠慮したのか、穏やかな天気で明るい夕空が見えました。

 さて、立春と云えば古今集の一番目に置かれた在原元方の歌「年の内に春はきにけり ひととせをこぞとやいはん ことしとやいはん」が思い浮かびます。

 この歌は正岡子規には散々に言われ、実際好い歌とも思えませんが、古今集の配列と云うことからみれば巻頭に置かれてもおかしくはないようです。

 と云うのは、古今集は春秋夏冬の歌が順に並べられているので、年内立春(陰暦では時々あった)と云ういわばマイナス地点からの出発と云う設定になっているようなのです。

 もうひとつは、第2首に筆頭選者の紀貫之の歌「袖ひちてむすびし水のこほれるを 春立つけふの風やとくらん」(去年の夏袖を濡らしてすくった水が冬には凍り、その凍った水を今春が来て融かしてくれるだろう)と云う、夏から冬を過ぎて今春になった嬉しさをあらわす素晴らしい歌が置かれていることです。実際は、この歌がゼロ地点でしょう。

 古今集は、歌が大変緻密に計算されて配列されています。平凡な歌が前に置かれて、貫之の歌がことさら引き立つようになっているようです。



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