たまたま図書館で借りてきた中勘助「銀の匙」は、なかなか面白い読み物でした。
お人好しのせいで落ちぶれてしまい私の家に厄介になっている伯母さんに育てられた弱虫の私の思い出話です。
銀の匙は、小さな子に薬を飲ますために伯母さんがどこからか見つけてきた、さしわたし五分(1.5㎝)ぐらいの皿型の頭にわずかにそりをうった短い柄がついているので、分あつにできているために、柄の端を指でもってみるとちょいと重いという感じがする匙。大きくなってから古い抽匣(引き出し)に入っているのを見つけ母からもらい受けるのですが「私はおりおり小箱のなかからそれをとりだして、丁寧に曇りを拭ってあかず眺めていることがある」と云う品です。
話は、まるで幻燈(小学校の頃はよく学校で見せられたものです)のように色々な場面が次から次へと現れるので読んでいて少しも飽きません。
中勘助は明治18年の生まれですから、話は明治20年代頃の事でしょうが、その頃の風俗が生き生きと語られています。
灘高の先生が「銀の匙」を教科書として中学3年間を通した一貫授業を行ったと云うのも頷けます。
「銀の匙」は中が在籍した東大英文科の先生だった夏目漱石の推挙で東京朝日新聞に連載されたようです。
非常に滑らかに読めたので、しばらく経ってからもう一度読んでみたい気がします。灘高の先生の授業の様に、各章にタイトルを付けながら・・
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