動物行動学者の鈴木俊貴さんの研究では、シジュウカラは言葉を持っているそうです。
シジュウカラを研究対象にしたきっかけは、鳴き声が鳴禽類の中でも群を抜いて複雑なことに気が付いたから。
例えば多くの鳥は捕食者を警戒する鳴き声をもっているが、シジュウカラは、捕食者ごとに鳴き声を使い分ける。
タカなら「ヒーヒー」カラスなら「ピーツピ」ヘビなら「ジャージャー」
シジュウカラの鳴き声は、「そばにいて」「ここにいるよ」「食べ物欲しい」「警戒しろ」「お腹すいた」「タカ」「ヘビ」「カラス」「集まれ」など15種類ほどあり、さらにこれを組み合わせて200以上の言葉を使っているそうです。
◇鈴木さんの研究
1.「ジャージャー」はヘビを表す単語か?
犬はワンワンと鳴くがこれは感情を表すだけで単語ではない。
鈴木さんは、3つの実験を行った。
①見せる
巣箱の上に天敵のヘビのレプリカを置くと「ジャージャー」と鳴いたが、これも天敵のカラスやテン等のレプリカを置いても「ジャージャー」とは鳴かなかった。
②聞かせる
録音した「ジャージャー」を聞かせると、巣箱の下や地面を見てヘビを探す仕草をした。
③サーチイメージ
人間は、熊と聞くと頭の中で熊をイメージする。シジュウカラはヘビのイメージを頭に描いているのか?
ひもを付けた細長い棒(ヘビに似た物)を木の幹に沿って垂らし、「ジャージャー」を聞かせながらヘビの動きの様に棒を引き上げる⇒12羽中11羽が接近して木の棒を確認した⇒ヘビをイメージして確認していることが分かる。
※3つの実験から「ジャージャー」はヘビを表す単語であることが分かる
2.シジュウカラは単語を持つだけでなく文章も作れる
モズなどの天敵が近づくと、警戒の単語「ピーツビ」と集まれの単語「ヂヂヂヂ」を組み合わせた「ビーツビ・ヂヂヂヂ」と鳴き、仲間が警戒しながら集まり、天敵を威嚇する。
逆の「ヂヂヂヂ・ビーツビ」を聞かせても知らん顔⇒語順を理解して解読している⇒二つの単語を合わせて文章を作っている。
3.組み合わせのルール(文法)を持つのではないか?
人間は、文法のルールを使うことで初めて聞いた文章でも理解する事が出来る。シジューカラは?
実験はルー大柴さんのルー語を参考に。
ルー語:逆鱗にタッチ(触れる)、藪からステック(棒)など
シジューカラは、他の鳥と一緒に群れを作っていて、他の鳥の鳴き声も聴き分けている。コガラの集まれは「ディーディーディー」でこの鳴き声にはシジュウカラも集まる。
では、シジュウカラにシジュウカラの警戒語「ビーツビ」とコガラの集まれ語「ディーディディー」を合わせた「ビーツビ・ディーディーディー」を聞かせるとどうなる?
自然界には無い鳴き声でも文法的に整っているので、シジュウカラは警戒しながら集まってきた。逆順では知らん顔。
※文法的に合っていれば、初めての鳴き声(文章)でも聞き分けることができる
素晴らしい研究ですね。シジュウカラが他の鳥より複雑で多様な鳴き声を持つのは、研究地の長野の森が鬱蒼としていて、お互いの姿が見えない中で連絡を取る必要があるせいではないかと云うことです。鈴木さんは、研究を進めて、これまで無かった「動物言語学」の確立を目指しているそうです。
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