坂口安吾(初めて読みました) の代用教員の話がなかなか面白いものでした。
こんな件が出てきます。
この子は然し本来よい子供で、時々いたずらをして私に怒られたが、怒られる理由をよく知っているので、私に怒られて許されると却って安心するのであった。あるとき、この子供が、先生は僕ばかり叱る、といって泣き出した。そうじゃない、本当は私に甘えている我がままなのだ。
「へえ、そうかい。俺はお前だけ特別叱るかい」そう云って私が笑い出したら、すぐ泣きやんで自分も笑いだした。子どもとのこういうつながりは、主任には分からなかった。
同じ子の話がもうひとつ
彼は泣き出した。彼は学校の隣の文房具店で鉛筆を盗んだのである。牛乳屋の落第生におどかされて、たぶん何か、おどかされる弱い尻尾があったのだろう、そういうことは立ち入ってきいてやらない方がいいようだ、ともかく仕方なしに盗んだのである。お前の名前など言わずに鉛筆の代金は払っておいてやるから心配するなと云うと、喜んで帰って行った。その数日後、誰もいないのを見すましてソッと教員室にやってきて、二三十銭の金を取り出して、先生、払ってくれた?とききにきた。
押し売りするわけではありませんが、面白いでしょう?
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