唐の賀知章と云う人の詩にこんなのがあるそうです。
題袁氏別業(袁氏の別荘の壁に書きつけた詩)
「この別荘の主人袁さんとは面識はない。
その見知らぬ主人とさし向かいで座ることになったのは、庭の林や泉のたたずまいに惹かれてのこと。
酒を買ってこなければ、などと余計な心配は無用。
わが財布にも、ゼニはある」
と、こんな意味のようですが、井伏鱒二が訳をつけています。
「主人ノ名前ハ知ラナイガ
庭ガミタサニチョトコシカケタ
サケヲ買フトテオ世話ハムヨウ
ワシガサイフニゼニガアル」
それに対して、三好達治が面白い解釈をしているそうです。
「最後の一句は、嚢中ここに酒代くらいは持ち合していますよ、というのではない。まして相手の嚢中をいうのでもさらさらない。誰の財布をさすのでもない。財布があれば銭がある、くらいのことだ。解釈をしていては詩を失う」
なるほど、金は天下の回りもの、と云う意味でしょうか。
そのようにとれば面白みがさらに増すようです。
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